寝る部

常識にとらわれない新しい〝快眠〟を日々探求しているブログ

連載ブログ小説『せんぱいせんぱいせんぱい乾杯、せんぱいサンライズ』(第1回)

京都のとある有名女子高に勤める男性教師に巻き起こるミステリー。

ミステリーに少しでもご興味があったら読んでみてくださいね。

第1章日の出

 

 寝起きのシャキッとした頭でないとキリつかないしフォーカスぶれるし「残業代つくの」というデリケイトな問題も含むため、会議を開くとすれば普通朝である。勿論学年会議とか科目ごとの会議とか小規模なものなら別だが、しかしこんな夕方に、上川女子高校、全教員総勢56名が集められることはそうそうないこと。5年勤めている私でさえ、4年前に生徒が失踪した時と昨年受験に思い悩んだ生徒が自殺した時の、過去2回しか知らない。

 集まっているのは職員室でもなく、会議室でもなく、かなり大音量サウンドで映画を堪能しても外に絶対に漏れないらしいから月に一度の上映会を楽しみにしていた映画研究会の活動を無理に休ませてまで、サッカーゴール大の巨大スクリーンがでんと構えている校舎3階、「視聴覚室」を利用している。ここにはスイッチを入れると黒い板に変化し、一瞬で部屋を暗転させる洒落た窓があるのだが、しかし今その暗転スイッチは入っておらず、ソフトボール部のシートノックとか、京都のなだらかな山並とか、真っ赤な夕陽がそこにディスプレイされている。今大切なのは、なにより窓の防音パワーなのである。

「あたしのあそこを、ゆっくり…………きたの……。……は、だんだん…………で、それから………ニヤニヤして…………を先生は一緒だから、確認しようとしたの」

 しかし正面席の中央、巨大スクリーンの前で、さきほどから涙をこぼしながら告白を続けている可憐な少女の声はとても小さく、部屋全体に届いていないし、時々泣き咽ぶせいで途切れ途切れで、現在、教師達56名が視聴覚室に「ロ」の字に囲んで並べられた長机の後方3辺に肩を寄せ合いながらギュウギュウに並んでいるが、彼女の消え入るような声に前のめりになりながら耳をそばだてていなければならないし、当然一番後ろの角っこに座っている私にはほとんど聞きとれない。寧ろ左隣の英語担当の女教師、吉田先生のバッファローみたいな鼻息の方が余程うるさいと言わざるを得ない。

(つづく)

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