寝る部

常識にとらわれない新しい〝快眠〟を日々探求しているブログ

連載ブログ小説『せんぱいせんぱいせんぱい乾杯、せんぱいサンライズ』第13回

京都の女子高に勤めるでぶ教師の再生の物語。

ミステリーに興味がある方は是非読んでくださいね。

■第13回

 

《ところで、知ってます?》とKOUHAIは続けたのである。《ああゆう女って指入れて適当に動かすとすぐ潮吹いちゃうって知ってます?へへへ!適当に指入れて引いたり押したりすれば、信じらんないくらい派手にスプラッシュするんです!スプラッシュマウンテンっすよ!ははは――っ!!女っていうより、もはやアトラクションなんです!!》
 不思議なのは不思議と思わなかったことだ。別段「気分爽快!」とはならないものの、荒唐無稽な夢を見てもそれを不思議に感じないのと同じように、私は吃驚も恐怖もせず、しかるべきことのようにやつを自然と受け入れていた。実際、その後、普通に職員室に戻った私は普通に授業準備を進めた。そしてその授業を終えた頃には、やつがいたことさえ振り返らなかったのである。
 が、よく考えるとそこが一番気持ち悪い。平然と受け入れられる自分に吃驚するし恐怖するのであって、「放っとくと深刻な病気に発展するんじゃないか?」とか「自分もやつの下世話な戯言を平然と口走るようになるんじゃないか?」とか次第次第不安は募っているのである。勿論ネットで検索してみたり医学辞典を開いてみたりしているわけだが、どれもしっくり来ていない。少なくとも手術で治る病気ではなく、医師との対話によって治るフロイトユング関係の病気だろうけれどもしかしながら病院に行く暇も勇気もないというのが現状。
 そしてこのたび、宗崎が退職したことによって仕事量が倍化すると、週に1度か2度しか現れていなかったやつは徐々にその出現頻度を上げたわけで、そして1週間も経つと、授業中にさえ現れて私の邪魔をするまでになったのだから困る。


 それは宗崎が退職してオシツケられた、もともと担当でなかったはずの1年C組の数学の授業でのことである。
「〝サイン君〟は直情型。〝コサイン君〟は八方美人なぶりっ子」
 私が5年間この高校で生き残れている理由、秒刻みで構成されつつも所々余談を差し挟むことも忘れないプロフェッショナルな授業によって数学世界の魅力を生徒たちに伝えていた最中のことなのである。
「せやさけ、こいつらに『倍角』言う魔法をかけてやると、〝コサイン君〟の方が、直情タイプの〝サイン君〟よりこんな風に、たくさん変化しよる!わかるか?勿論『2乗』言う魔法をかけてやった場合でも、わあ、びっくりした!〝コサイン君〟って、こんなにたくさん変化しよるんやなあ!」
 こんな風に、ちょうど授業開始から22分30秒が経過し、予定通り「倍角の公式」の解説をすべて終え、予定通り教科書の練習問題を生徒達に解かせはじめた時に、《数学マスタぁぁあ――!!》と、その日休んでいた生徒の席に勝手に座り机をバンバン叩きながら笑っていたのが、KOUHAIだったのである。
《え?!〝コサイン君〟〝サイン君〟〝タンジェントさん〟って誰っすか?!受ける!受ける!てっきりせんぱいのことだし、素人を寄せつけないゴリゴリ硬派な授業をなさってらっしゃるんかと思いきや、なんとも女向けの軟弱な授業してるんですねぇぇ―――っ!腹痛てえっす!腹筋痛てえっす!!》

(つづく)

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