寝る部

常識にとらわれない新しい〝快眠〟を日々探求しているブログ

連載ブログ小説『せんぱいせんぱいせんぱい乾杯、せんぱいサンライズ』第14回

京都の女子高に勤めるでぶ教師の再生の物語。 ミステリーに興味がある方は是非読んでくださいね。

■第14回

 

 KOUHAIは涙を流して私の授業を笑っていたが、笑いたいのはこっち、断っておくと、数学世界を徹底的に擬人化することよって説明するという斬新な手法は、子供達が難解なものをどうしたら受け入れやすくなるだろうと、私が悩んで悩んで悩み抜いた挙句にようやく到達した究極奥義、確かに一見すると馬鹿げたものに見えるかもしれないが実際これで予備校時代は夏季講習受講者満員御礼という偉業を達成、そしてそれが評価されているからこそこの環境で5年生き長らえているという確かな実績に裏付けられたディズニーランド級エンターテイメントなのである。
《にしても、せんぱいラッキーでしたね――っ!》とKOUHAIはそんなこと一切構わず立ち上がると、静かに問題に取り組んでいる生徒達の間を元気に側転しながら動き回ったのである。《オシツケ仕事の中でも、唯一ラッキーだったことあったじゃないっすか!だって、こ――んな、かわいい子がいるクラスの担当をできるようになったんだから!》
 KOUHAIが指差したのは、エントリーナンバー3番、1年C組味岡志保であった。
 私が指導して来た何千人という生徒の中でも、多分一番と言える美しさを誇っていることは入学式で見た瞬間気付いたくらいで、家が老舗旅館経営者とか聞いているが別に聞かなくても彼女の顔立ちを見ればやんごとなき生まれであることが十分伝わってくる京都美女、彼女の髪の匂いをKOUHAIが間近から嗅いでいるのもわからないでもないわけであるが、しかし、私は味岡志保を他の生徒と区別したことはない。というのも、性格の悪そうなあの擦れた感じはまさしく私に無視かましてきた事務女性を思わせるものがあったし、いつも露骨につまらなそうに私の授業を聞いているし、今なんて最高の授業を頭を伏せて寝てやがる始末、彼女のクラスを担当できることを喜ぶどころかその小ぶりなケツを蹴り飛ばしたいというのが飾りのない本音なのである。従ってまったく的外れなことを言っているKOUHAIに言い返したかったものの授業中いきなり教師が幽霊と喋りだせば変人と絶対思われるので黙殺していると、やつは《あ、でもやっぱりこっちでしょ!》と、教室の窓際の一番前にちょこんと座って問題を解いている橋元ららという生徒を指差したのである。
《あ!こうゆう人こそせんぱいのどストライクだ!絶対せんぱいはこういう子が好きですよ!》
 しかし、それは正解と言わざるを得なかったのである。

(つづく)

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