寝る部

常識にとらわれない新しい〝快眠〟を日々探求しているブログ

連載ブログ小説『せんぱいせんぱいせんぱい乾杯、せんぱいサンライズ』第18回

京都の女子高に勤めるでぶ教師の再生の物語。 ミステリーに興味がある方は是非読んでくださいね。

■第18回

 

《なんでです?》とKOUAHIは助手席から聞いた。《別に普通じゃないっすか》
「俺も最初ようわからんかったんや。でも確かに強い殺意を抱いていることは確かやねん。でもよく聞いてみると駒田の答えってなんかズレてへんか?」
《えーと、『今どんないじめを受けてるの?』ってせんぱいが聞いて、『宗崎先生にほとんど話はしたんで……へへ』って駒田ってやつは答えたわけですよねえ……。まあ普通なら、『こうこうこういういじめを受けてます』って答えますもんね》
「そうや。さっさと答えればいいものを答えてへんやろ」
《でもそんくらいのことっすか?そりゃ、駒田君もいじめの話をしたくないだけで……》
「あほ!」と私は言った。「俺かてな、一言二言ならそら気にもならんけど、いっつもやねん!ずっとやねん!全部返事が、少し変やねんで?!ジオラマの話でも「F1カーのプラモとかも作るの?」とこちらが聞くと、「まあ、僕はそんなにF1は見ないので……へへ」、「手先器用なの?」と聞くと「図工の成績はいつも悪いので……へへ」と、「学校の部活は何やってるの?」と聞くと、「僕は給食の時間に限っては、当番をやっているんで……へへ」と答えるんやで?」
 言い草は生意気でも攻撃的でもない。しかし鸚鵡返しと言うか、素直に答えればよいべきところをいちいち答えず、答えが微妙にズレているため、結果こちらは2回聞かなければいけなくなる面倒が最初からず――っとず――っと繰り返されるのである。
《確かに数学的な正確さを欠いてますね》
「それに、何がおかしいんか最後絶対笑うねん。まあ、癖らしいけど、それが重なってくると、なんか人を馬鹿にしているようにも見えてくるんや。ほいで、さっきの『宗崎せんせいにも話をしたんでえ……へへ』の『へへ』で、(なんでおまえにももう一回喋らなきゃいけねえんだよ面倒くせえなあ)に聞こえてきて、なんかむしゃくしゃ怒りがたまってきてな。せやから俺は『宗崎には話したんだろうけど、私は知らないからいじめの話をさっさと言え言うてんねん!』て思わず怒声を上げたんや」
《え!大丈夫だったんですか?》
「すいません、すいません、言うて、駒田は目をうるませてんねん」
《泣いたんすか?》
「そこまではいかんけど、ひたすらに謝りだした。せやけど、こいつはとりあえずこの場は何も主張せずやり過ごすが案外プライドとうぬぼれだけは人一倍強そうやった」
《影では異常に大胆不敵の無敵状態になるやつですか》
「いかにも執念深そうな危ない輝きやった。このまま別れたらこいつは絶対いきなり私の文句を上層部に訴えやがる危険を察したんや」
 私は慌てて『……なにが?』と自分が大声になったことをとぼけひとまずうやむやにしてから、次に彼のいじめの内容を同情の表情を作ることに全力集中しながら聞き、かといってこの場が湿っぽくなり過ぎぬよう時々自虐的な冗談も挟んで笑わせることも忘れず機嫌を取って取って取りまくったのである。
「……まあその努力が実り最後はかなり仲良くなって笑いながら別れたったけどな」
《ふーん》
 意外にもKOUHAIは頭の後ろに手を組んであくびをしながらフロントガラスを見ていた。自分の幻覚に、まったく私の怒りを共感してもらえないのは中々辛い気持ちであった。

 

(つづく)