寝る部

常識にとらわれない新しい〝快眠〟を日々探求しているブログ

連載ブログ小説『せんぱいせんぱいせんぱい乾杯、せんぱいサンライズ』第22回

京都の女子高に勤めるでぶ教師の再生の物語。 ミステリーに興味がある方は是非読んでくださいね。

■22回


 だから今、一介の教師であるということがどうしても筋が通らないのである。代わりのきく仕事をするその他大勢の一人である理由がわからない。一体いつから間違えてしまったのか?あの栄光からどうして今こんな汲々とした毎日を送ってしまっているのか?一体なぜ今の自分は駄目なのか?
 まるでそんな私の境遇と重ね合わせるように、今の数研も衰退してしまっている。女子高になったせいなのかそれともそれ以前からなのかまったく知らないが、かつてのあの激しい活動の名残は一切なく、普通の高校の数研同様、「部活したくないけど帰宅部だと親がうるさい」とか「内申に問題があるかな」と思ったやつが選ぶ程度の、ほぼ帰宅部に属するような部活と成り下がっているのである。それをこの高校に就任した時に知った私は、いささか残念な気持ちがしていたのは確かだけれど、だからといってどうしようとも思わなかったし5年間のうち1度だってこの部室に近づいたこともなかった。


 しかし、このたび宗崎の数研部の顧問という仕事を引き継いだため、駒田と面会した2日後の放課後に月2回行われている活動があるからそれを監督するようにと指示を受け、ついに13年ぶりにこの部室に足を踏み入れることになったわけであるが、しかし数学マスター様様がこの部室に戻ってきた理由が、一介の教師に成り下がってその挙句誰もやりたがらない仕事をオシツケられたためというのはなんだか皮肉のような気がしつつ、最初の10分でたった3人の部員(昔は39名も在籍していた)に自己紹介や宗崎から引き継いだ旨を伝え、消え入ってしまいそうなほど影の薄そうな存在の女(一応部長らしい)が「……では、本日、近づく中間に向け各自数学の自主学習を行います」と言い、残り二人が「はい」と返事をし、机に向かいはじめ、私は彼女達の質問に答えてやったりいい参考書を教えてやったりしたものの大方はずっと教壇で頬杖をつきながら監督しているだけで、「このオシツケ仕事は案外楽で良いですね」と思ったが、「私がいなくても同じですね」とも思いつつ、締め切りが明日と迫った駒田の報告書のことをぼうっと考えていた。
 一応この2日間で、セブンで購入した言葉使いの本をざっと読んでいたけれどもやつはいじめられて当然という結論しか思い浮かんでいないし、だいたい報告書と言ってもこのプログラムに参加している他の教師達が一体どれくらいの分量とクオリティで書いているかという点が皆目わからないからいまいち方針も立たない。
 私は結局嫌になってあくびをしながら、13年ぶりに訪れた懐かしい部室を観察しはじめた。実は数研自体はかつてと変わったと言っても部室は当時と同じ、というか、25の文科系の部活の為に建てられているこの部室棟自体が内部も部屋割りも全然変わっていない。数研の部室が2階の廊下の突き当たりの部屋であることも、隣が美術室であることも、黒板の位置や出入り口の位置も私が所属していた頃とまったく同じだがしかし、てっきり私はこんな不便な状態はとっくに建てかえられていると思い込んでいただけに数研の部屋の一風変わった特殊過ぎる面も当時のままであることには驚いた。

(つづく)