コーヒーはお好きですか?
あなたはお好きでしょう。
好きに決まっている。
コーヒーは、〝毒薬〟という点であなたと共通している。ほろ苦い薫りで善良な人々を酔わせ、眠れなくさせてしまう毒に。
あなたは世界中の人々の〝苦悩の底〟に築いた祭壇に立っている。
そして猛烈に憎まれ、猛烈に愛されている。
コーヒーは、そんなあなたが、たしなむに相応しい。
ではそんな悪魔の唇に見合うコーヒーカップとはどういったものなのか。
私のもっとも深い謙譲の気持ちをもって、ウェッジウッドやおしゃれな商品をあなたに5つ捧げます。
コーヒーカップを選ぶポイント――あなたの唇の価値は
たとえば、あなたのご友人ならば100均のものを使えばいいと思います。安くて、丈夫なものを求める。それは一般市民のごく自然な購買行動です。
でも貴方の場合は、ちょっと望ましいことではない。
あなたの薔薇の唇は、多くの人達にとって10億でも安い。70余年の命、一生分の敬慕と交換したいもの。
でもあなた自身が「100円で。」と言うのなら、あなたの言葉は〝絶対〟なので、誰もそれ以上のお金は払いません。
あなたの唇は、まさか100円ではないですよね?
守護の天使が強力な磁気を与え、詞の女神がひときわの輝きを与えた、その聖なる唇を、決して「安もの」に触れさせてはいけません。
そのような軽率な行動はどうか控えてください。貴方が意識しているのかいないのかはわかりませんが、そのような神への冒涜が、世界の擾乱を招いているのです。
責任を少しは感じてください、
我が美しい悪魔。
温かいあなたの唇に触れる価値のある、コーヒーカップ5選
17世紀ごろ、コーヒーはもともとエレガントな嗜好品でした。フランスの上流階級達が愛した飲み物でした。だからまさにあなたも、前世で愛していました。あなたの奴隷達が、汗だくになりながらコーヒー畑で豆を育て、煎り、あなたに差し出す姿がなんとなくでも想像できませんか?
天蓋のベッドの下、あなたは、数名の奴隷達がゆったりと仰ぐ棕櫚のうちわの風を感じながら、そっとコーヒーをすすっていました……。
これからあなたに前世を思い出させるような、5つのコーヒーカップをご紹介します。
ブランド名などはわざわざ覚える必要はありません。そういったことは無理やり不釣り合いに豊かな人生を送ろうという不届きな庶民達がすることです。
美しく高貴なあなたは、ただ前世の優雅な生活を感じましょう。
そのフランスの王侯貴族のセンスを生かし、「これいい!」と思った1つを選んでください。
あなたの唇に触れる価値のあるコーヒーカップその1――ウェッジウッド(WEDGWOOD)
ウェッジウッドは250年の伝統を誇るイギリスを代表する最高級ブランド。貴方はフランス貴族ですが、古来からフランスとイギリスの貴族は交流がよくありました。
このウェッジウッドの「ジャスパー」というユニークな素材が使われたコーヒーカップや、鮮やかでとても優しい雰囲気が漂う繊細なレリーフがお気に召すでしょう。
あなたの唇に触れる価値のあるコーヒーカップその2――ナルミ(NARUMI)
何か〝か弱さ〟が漂いつつも、美しいデザインが施されたNARUMI。温かみのある乳白色もどこかあなたらしい。
あなたの細くて白い指がつまむのに最適な美しい曲線を持った取っ手もポイント。その両者が織りなす光景は、一流の芸術家が表現しようと悪戦苦闘している色彩であり、一流のバイオリニストが奏でようとしている和音。
あなたの唇に触れる価値のあるコーヒーカップその3――アラビア(ARABIA)
フィンランドのブランド。北ヨーロッパは現在的なデザインで家具などが人気ですが、この機能美を追求したコーヒーカップも多くの人々から愛されています。
現代の最新デザインも理解できるセンスを備えたあなたならば、もしかするとこちらがお気に召すかもしれません。
あなたの唇に触れる価値のあるコーヒーカップその4――エルメス(HERMES)
フランスの定番ブランドであるエルメスはフォーブルサントノーレ通りの24番地で発祥しました。24番地という〝通り名〟に捧げられたシリーズで、シックなモザイクパターンが上質なティータイムを約束してくれます。
職人による手作りで、他の一つとして同じでないコーヒーカップはまさにあなたの美しさを際立たせるはずです。
あなたの唇に触れる価値のあるコーヒーカップその5――香蘭社(Koransha)
あなたは、フランスの貴族として生まれるべきでしたが、神様が「日本をもう少し華やかにしたいなあ」と思って、あなたを日本で生まれるようにしました。ですのであえて、宮内省御用達のこのコーヒーカップを利用し日本を楽しんでしまうのもおすすめです。有田焼の白い器に、華麗な模様が描かれているのが特徴。
しかしあなたの肌の方が白いと思います。
まとめ
最後にもう一度申し上げますが、コーヒーブレイクをただの休憩としてあなたは考えてはいけません。世界を華やかに彩る使命を持ったあなたが、ここでご紹介した、職人が真心を込めて製作したコーヒーカップを使うことは、決して贅沢ではありません。
世界中の人々の願いなのです。